2013年11月29日金曜日

ブログ書評第22回 『私の身体は頭がいい』





今日、私たちが直面する出来事や問題には、人間の「身の丈にあった」ものではないことが多いように思われます。身近なものとして「お金」をとりあげてもそうですが、一瞬で数億を手にした(あるいは損失した)という話は、羨望や驚嘆がある一方で、まっとうに働くのでは手に入らないその額に現実味のなさを感じ、この不気味なものをはたして人間は取り扱うことができるのか、と疑問すら思い浮かびます。(もちろん、お金のやりとり全般が悪いというわけではありません。が、相手の顔が見えなくなったとき、そして、巨額になればなるほど、人間の手に負えなくなる可能性は急激に高まるのではないでしょうか)

人間の身体感覚に照らせば「あり得ない」ことが諸問題として噴出しているとすれば、ものごとを一旦「身体」というフィルターにかける必要があるのではないか。そのためには、身体感覚の活性化、いわば「身体知」の獲得が求められるのではないかと思うのです。

著者の内田樹さんが30年以上かけて鍛錬した合気道を通して語る武道論・身体論は、深く納得させられ、ときに自分の身体感覚の未熟さに気づかされる、たいへんにおもしろいものです(「おもしろい」としか言えないところにも、感覚や語彙の未熟さを感じる……)。「無敵」とは何か、「『機』の思想」など本格的な武道論から、医療やコミュニケーション、引っ越しなど生活のなかに見える身体論まで、読んだその時から「何か違う」感じが体の中から湧き上がってくるような話題が満載です。

武道に取り組まれている方だけでなく、何となく「行き詰まり」を感じている方にもそれを打破するヒントを与えてくれる本だろうと思います。身体の「頭のよさ」に気づいてみませんか?

―スズキ

2013年11月22日金曜日

ビブリオバトル首都決戦・中部地区決戦結果

去る11月3日、ビブリオバトル首都決戦・中部地区決戦が信州大学の大学祭「銀嶺祭」にて開催されました。

予選会を勝ち上がった3名が
E・ブリニョルフソン、A・マカフィー『機械との競争』
貴志祐介『新世界より』
と学会『トンデモ本の新世界 世界滅亡編』
が紹介され、『トンデモ本の新世界 世界滅亡編』が新世界対決を制してチャンプ本に選ばれました!

これにより、信州大学経済学部3年の服部匡起くんが中部地区代表として首都決戦に出場します。

首都決戦は今週末、24日(日)の午後1時から、秋葉原の「ベルサール秋葉原」にて開催されます。
大学生のライブ感あふれる書評ゲームを、是非お楽しみ下さい。

遠方の方は動画配信をご利用下さい。
YouTube、ニコニコ動画、USTREAMで配信が行われます。
くわしくはビブリオバトル首都決戦2013ホームページを御覧ください。

年に一度のお祭りです。皆様お楽しみに!!

ブログ書評第21回『クララは歩かなくてはいけないの?』

前回からかなり間が開いてしまいましたが、書評は続きます!


今日紹介する本は、ロイス・キース『クララは歩かなくてはいけないの?』です。


既にお気づきの方も多いと思いますが、タイトルの「クララ」は、『アルプスの少女ハイジ』に登場する、車いすに乗る少女です。『ハイジ』では、ハイジが住むアルプスにクララも住むことになり、そこでクララが自立する意思を持ち始め、ついに車いすから立ち上がり歩き出すシーンが感動的に描かれています。私も、そのシーンはアニメで見て、今でもよく覚えています。

本書では、この感動的なシーンについて全く新しい見方を提示してくれます。なぜ私たちは「障害」からの「回復」に感動するのでしょうか。著者は、その裏には私たちが無意識に持っている「障害」に対するイメージが、特に子供向けの文学において比喩として用いられていると書いています。
その「イメージ」とは一体どういうものであるのか。それは是非読んで確かめていただければと思います。

私たちは普段「障害」や「病気」というものを「克服されるべきもの」と捉えがちです。そのような観点がどのくらい普遍的なものなのか、また、そのような考え方が障害を持つ人の幸せにつながるのか、非常に考えさせられる本です。

本書はロンドンに住む著者によって書かれていて、著者自身も事故で車椅子を使用しているそうです。私は日本に住んでいて車いすも使用していないので、本書に書かれている著者の考え方に戸惑うこともありました。国や時代、もちろん個人の間でも障害に対する考え方も異なるのかもしれませんし、宗教観なども関わっているのだろうとも感じられ、それについても新しい見方を教えてもらった気がします。障害と宗教観については、巻末の解説にも注目して下さい。

障害を「障害」と呼ばせるものは何なのか、「回復」とは何なのか、障害は「回復」しなければいけないのか、難しい問いですが、とても大事な問いであると思います。(あらと)

2013年10月20日日曜日

ブログ書評第20回『現代語訳 福翁自伝』


みなさんは偉人と聞くとどんなイメージが持つでしょうか。とにかくすごい、えらい、自分とは全く違う人生を歩み、立派に大成なされた方などといった固定概念を持つかもしれません。今回紹介する福翁自伝はそういう固定概念とかエライからエライといったものを毛嫌いしていて、とても人間味あふれる人生を送った福沢諭吉という男の自伝です。

ご存知かと思いますが、福沢諭吉は近代日本の父とまで評される人ですが、この本はそんな福沢諭吉の歩んできた人生で出会ったすべらない話集という感じが強いです。自分が読んだ”ちくま新書”から出ていて齋藤孝さんが編訳している本の帯には“『学問のすすめ』よりおもしろい日本最強の自伝。”と書いてありますが、この二冊はおそらくおもしろいの言葉の意味が違います。学問のすすめのおもしろいはinterestingで福翁自伝はどっちかといえばfunnyの方のおもしろさです。


この本のおもしろさは我々が知っている偉人、福沢諭吉像の偉大さを実感させつつ、笑わせに来ているところにあると思います。たとえば、諭吉が当時所属していた研究機関(?)緒方塾は西洋の学問を学ぶ場所でした。しかし、当時は外国語の文献を読んで分からないワードがあってもそれを調べる辞書が一冊しかない。そのため、辞書を置く部屋を決めて、その辞書の名前をとってヅーフ部屋としていたそうです。会読(報告会のようなもの)が5日おきぐらいに開かれるので、その前日は夜を徹して、塾生は誰ひとりとして怠けること無く10人ぐらいが辞書の周りで郡をなして、無言で勉強していたということです。

素晴らしいですね。見習いたいですね。

しかし、その前の項目で書かれていることが、夏はとても暑い。塾生は全員男だ。そのため、夏は全員裸、ふんどしも何もつけない。という風に書いてあるのです。これでは、真夏の夜中に大勢の男たちが辞書を囲んで無言で勉強していた事になります。こんな環境には居たくないなぁとその場の空気感を想像しつつ、諭吉達が笑っちゃうような環境で学問を探求していたことが伺えます。

文章としては読者に自分の人生をおもいっきり楽しんでもらいたい、といった感じがする情熱的な文章です。諭吉自体が明治維新の頃、どんな頑迷な翁、嫗でも説得してみせる。と言った男でありまして実際、非常に弁がたつということもあり、読み手の心をつかむ力はすごいです。おそらく、福沢諭吉がひたすら立派な方であると思い込んでいる人にとっては目次をご覧になった時点で「小皿を盗む、投げつける」といった見出しに驚愕するでしょう。もちろん、日本の近代化が進むまで諭吉本人がどう西洋文化に触れたか、どう日本に持ってこようかと苦心するところなどは非常にためになるかとは思います。しかし、私のこの本を読んでの特筆事項は諭吉のギリギリのすべらない話であると思います。

みなさんもぜひ、近代日本の父のアブナイエピソードを見て、大いに笑ってください。

                               (ひろおか)

2013年10月12日土曜日

ブログ書評第19回『オレたちバブル入行組』

こんばんは。ビブリオ信州のKです。衣替えをしたと思ったら暑さが帰ってきましたね・・・。健康には気を付けてお過ごしください。

さて、今日紹介するのは、話題騒然だったドラマ「半沢直樹」の原作にあたる『オレたちバブル入行組』(文春文庫、著者:池井戸潤)です。「倍返しだ!!」は記憶に残るセリフだったと思いますが、実はこれ、作中では一度しか出てきません。(笑)ちなみに僕はドラマを見なかったのですが、それを今更後悔しています。どこかで機会があれば見たいなあ。

舞台は東京中央銀行大阪西支店。融資した取引先が経営破たん。半沢は上司から全責任を押し付けられます。それにひるまない半沢は不合理に立ち向かい、最終的に上司に謝罪させる…簡単なあらすじはこんなところです。とにかく読んでるとスカッとします。嫌なこととか忘れそうです。

ここからは僕が読んで思ったことを。
この上司、実は悪い人ではないのでは、と感じました。家族を守るため、家族に害が及ばないように奔走するのです。組織(銀行)を巻き込んでまで。ただの憂さ晴らしに部下に嫌がらせをしていたわけではありません。ただ単に物事が進んでいるのではなくて、背景に様々な思惑が渦巻いていることを実感しました。現実でもこのようなことは多いかもしれません。


また作中では半沢の同期が何度も登場して、半沢に知恵を貸します(彼らはことあるごとにお酒を飲んでいますが、お酒に強いのでしょうか・・・)。同期もまたもがき苦しんでいるわけですが、同期については第2シリーズ(『オレたち花のバブル組』)にて 詳しく描かれているそうです。
同期は半沢にとって強力な武器となり、友情の熱さを感じました。

銀行が舞台のお話ですが、そこまで難しい用語は出てきません。読みだしたら駆け抜けるように読み切れると思います。スカッとしたい方、ぜひ一読してみてはいかがでしょうか。

【宣伝】
11/3(Sun.)14:00~
銀嶺祭(学園祭)内で地区決戦開催!


 

2013年10月11日金曜日

ビブリオバトル首都決戦2013 地区予選会

10月10日(木)、地区予選@荒戸ゼミ が開催されました。

16時30分から2ゲームが行われました。発表本・チャンプ本は以下の通りになります。


【第1ゲーム】
①『きみの友だち』(重松清)
②『新世界より』(貴志祐介)
③『現代霊性論』(内田樹・釈徹宗)
④『四畳半神話体系』(森見登美彦)
チャンプ本は、『新世界より』になりました。

【第2ゲーム】
⑤『トンデモ本の大世界』(と学会)
⑥『新世界より(ハングル版)』
⑦『天空の城ラピュタ』
⑧『リーダーは誰だ?』(長尾一洋)
チャンプ本は、『トンデモ本の大世界』になりました。


今回も、アツく、愉快なバトルが繰り広げました。
まさか2年連続、予選会で「重複」を見られるとは!
(参考:首都決戦(2012)予選会第2日

地区決戦では、どんな本・紹介に出会えるのだろうか・・・・・・
チャンプ本を紹介された方には、秋葉原めざして地区決戦でも頑張っていただきたいと思います。

以上、予選会レポートでした。。

2013年10月5日土曜日

9/23高遠町図書館ビブリオバトル

9月23日(月祝)、伊那市高遠町でビブリオバトルが開催されました。

高遠町はお城や桜が有名ですが、「本の町」としても知られています。
この日は町あげての本のお祭り「高遠ブックフェスティバル」の最終日。
さらに町の鉾持神社の秋祭り「燈籠祭」も開かれ、街中がお祭りムード。

中日新聞:秋空におはやし響く 高遠で燈籠祭

ビブリオバトルは高遠町図書館「としょかんまつり」のイベントとして
14:00から2ゲーム行われました。
図書館司書さん、学校の先生、お医者さん等、多彩な方々が出場され、ほとんどの皆さんは初めてのビブリオバトルだったそうですが、とてもそうは見えない素晴らしい紹介が勢ぞろいしました!

紹介された本は、
第1ゲーム:
夏目漱石『吾輩は猫である』
ももせいづみ『運と幸せがどんどん集まる「願いごと手帖」のつくり方』
芥子川ミカ『妖怪セラピー』
江國香織『落下する夕方』
飯間浩明『辞書を編む』
で、チャンプ本は『辞書を編む』でした!

第2ゲーム:
島村利正『庭の千草』
クリストファー・プリースト『夢幻諸島から』
立川談春『赤めだか』
矢口忠大『ビブリオバトル』
で、チャンプ本は『庭の千草』でした!

終了後は古本市を見に行って、出場者の方、観覧者の方からも『楽しかった』『またやりたい』等の感想をいただき、お手伝いした我々も大変楽しませていただきました。

出場者「しろくま」さんが、感想をブログにまとめて下さいました。
雰囲気も含めて大変詳細に書いてくださっているので、こちらも是非ご覧ください。

しろくま通信:「ビブリオバトル」に参加してみた

長野も各地でビブリオバトルが広がっております。
11/3は信州大学で地区決戦(こちらを御覧ください)、
11/4には塩尻市立図書館で、それぞれビブリオバトルがあります。
皆様お気軽にお越しください!

2013年10月4日金曜日

ブログ書評 第18回『七回死んだ男』

こんにちは。N.Tです!さっそく書評を書いていきたいところですが、この記事の前にビブリオバトル首都決戦に先駆けて行われる地区決戦の情報があります。11月3日の14:00から信州大学にて予選会の勝者によって行われます地区決戦は観戦無料・予約不要です!ぜひお時間のある方は足をお運びください~。

さて、今回のブログ書評についてお話しさせていただきます。紹介する本は西澤保彦さんの『七回死んだ男』です!
この本は一風変わったミステリー小説となっています。タイトルを聞いただけでは、ん?となってしまいますが、とても奥の深い小説だと思います。これからこの小説を面白くしている根幹となっている設定について簡単に説明していきたいと思います。
まずこの本の主人公である通称キュータローという高校生はほかの人にはない特別な”体質”があります。それは時間を遡れるというものです。しかしこの時間を遡れるという体質にはいくつかの制約があります。1つ目に戻れる時間は1日分だけ、ちょうど24時間まえにしか遡れないことがあります。2つ目に自分がいつ時間を遡るかをコントロールできないことがあります。いきなり何の前触れもなく、本人の意思とは関係なしに時間が1日分戻ってしまいます。3つめが、時間を遡る体質が発現してしまうと9回それが繰り返されてしまうことがあります。つまり1度時間を遡ってしまうと9回同じ日を過ごさなければいけないのです。主人公のキュータローはこの自分の体質を反復落とし穴と呼んでいます。自分の意思とは関係なく、同じ日を9回反復してしまうという変わった体質を持つ主人公の設定によって、この小説にほかの小説にはない面白さを生み出しています。少し難しいかもしれませんが、意外と単純な仕掛けです。

先ほども少しタイトルについて触れましたが、七回死んでしまうのは主人公のおじいちゃんです。ある日おじいちゃんが何者かに殺されてしまうことから物語は始まります。このおじいちゃんが殺されたその日に、主人公の反復落とし穴が発動するのです。この体質を利用して主人公は犯人捜しをするという物語です。

この小説は殺人事件をテーマにしたミステリー小説なのですが、この主人公の設定や、文中の表現によってシリアスな雰囲気を感じずにスラスラ読むことができます。変わった設定ですが、最終的にはしっかりと論理的に物語が終わり、突拍子もない設定なので突拍子もない終わり方をするのでは?という心配は無用です。ミステリー小説が苦手な方でも読みやすく、楽しめる本かなと思います。

2013年10月2日水曜日

ビブリオバトル首都決戦・中部ブロック情報

今年もビブリオバトル首都決戦の季節がやってまいりました!

首都決戦とは、年に一度の大学生による全国大会です。
大学生・大学院生(大学生相当年齢の高専生,専門学校生を含む)なら、

予選会→地区決戦→首都決戦

と勝ち進むことにより、どなたでも日本一への挑戦が可能です!


中部ブロック(長野・山梨)でも、予選会が決まりつつあります。
出場者・観戦者募集中です!

10/7(月)
信州大学経済学部・関ゼミナール
(こちらは参加受付は行っておりません。)

10/10(木)16:30~
信州大学経済学部・荒戸ゼミナール
(出場・観戦受付中!2ゲーム行います)

「私も首都決戦に出たい!」という方、
「ビブリオバトルって知らないけど、一度見てみたい」という方、
お気軽に biblioshinshu@gmail.com までお問い合せ下さい!

また、「予選会に出たいけど、日が合わない・・・」、「会場が遠い・・・」という方、
なんと、出場者が自分で予選会を開催することも可能です!
出場者を4人以上、参加者(出場者+観戦者)10名程度集められることが条件です。

サークル・ゼミ・研究室単位はもちろん、個人での開催もOK!
詳しくは「ビブリオバトル首都決戦2013」ホームページ
http://shuto13.bibliobattle.jp/yosenkai
をご覧ください。


中部ブロック各予選会の勝者は、代表決定戦「地区決戦」に出場いただきます。

今年の地区決戦は、
11/3(日・祝)14:00~
信州大学の大学祭「銀嶺祭」内で開催されます!

観戦無料!大学生もそうでない方もお気軽に観戦にいらしてくださいね。


そして、「地区決戦」の勝者は中部ブロック代表として、
11/24(日)東京・秋葉原の「ベルサール秋葉原」で開催される「首都決戦」に出場します!
あなたがビブリオバトル大学生日本一になる日も近い?

読書の秋、スポーツの秋は、読書とスポーツを兼ね備えたビブリオバトルをやるしかないですね~
皆様のご参加・お問い合せ、お待ちしております!!

2013年9月28日土曜日

ブログ書評 第17回 『僕の死に方 エンディングダイアリー500日』



こんばんは。秋山です。
今回紹介する本は金子哲雄著『僕の死に方 エンディングダイアリー500日』(小学館)です。

著者である流通ジャーナリストの金子哲雄さんは、2012102日肺カルチノイドのために、この世を去りました。著者は20116月に前述の病名を宣告され、「今すぐ亡くなったとしても、驚きません」と医者から説明されました。この本は金子哲雄さんが余命宣告からこの世を去るまでの約500日をどう生きたかを綴っています。

この本は前半で発病前まで著者がどう生きてきたか、後半で発病後、病気とどう付き合って生きていったかが語られています。前半では流通ジャーナリスト・金子哲雄がどう誕生したかが語られています。学生時代や家庭での経験から将来のビジョンを描く様や、日々の地道な調査活動から、テレビで見かけた、一見軽そうな言動の裏に確かな土台があったことが読み取れます。エピソードの中にはちょっと大胆な行動もあり、著者の自分の仕事に対する自信がうかがえます。

後半では発病後、仕事と闘病を両立しながら生きていく姿が語られています。発病発覚後、著者の病気の進行具合によって彼の心境が変化していきます。私は主に三段階に分けらていると思いました。まず治療方法を模索しながら病気と付き合っていく段階、次に病状が悪化し、思うように仕事ができなくなっていく段階、そして2012822日危篤に陥り、本格的に死に直面する段階があります。病気が進行する中で、著者は著者らしい筋の通った生き方をしていきます。特に8月22日以降の著者の生き方は、是非本書を手にとって読んでいただきたいと思います。私はこの本を読んで、著者の生き方が羨ましくなりました。

また、著者は在宅医療や自分の葬式のプロデュースをしています。死ぬまで付き合っていかなければならない病との付き合い方や、自分の死後のに対する考察は普段しないでしょう。しかし終末医療は多くの人が、葬式にいたってはほぼすべての人が必ず直面する問題です。いまのうちに実際経験した人の著作を読むことはより良く生きるのにプラスになると考えます。

私達はいつか必ず死にます。本書の金子哲雄さんの生き方に触れて、自身の死に方・生き方を一度みつめてみませんか。

2013年9月16日月曜日

ブログ書評 第16回 『「待つ」ということ』

 ごきげんいかがですか、スズキです。

 私の3回目となる今回は、『「待つ」ということ』(鷲田清一、角川選書、2006年)を紹介いたします。




 この本を通して考えさせられるのは、「待たなくてよい社会、待つことができない社会の到来によって、私(たち)は何を得、何を失った(あるいは失い行く)のか」ということです。

 たしかに得たものもあると思います。たとえば、携帯電話を使った待ち合わせでは、携帯電話のおかげで両者は待つ(待たせる)時間を正確に把握できるようになり、待たせる方は相手に心配をかけなくて済む安心が生まれ、待つ方も約束までの空白の時間を効率よく使えるようになりました。別の例をあげれば、子の出産でもそう。待たずとも、性が判り、顔がほのかにわかり、遺伝子までわかるようになりました。可処分的時間の増加、安心、そして近未来を得られるようになったことには、一定の意義があるでしょう。

 しかし、ある大切なものも失いつつあるのではないか。待つことで生じる「豊かな感情・自分だけの繊細な感情」を失いかけているのではないでしょうか。
期待や不安も、焦れや絶望も、「待つ」ことがなければそれらを抱くこともない。そうして平板になった生活に人間らしさや面白さを見出すことは出来るのだろうか。感情の乏しい、つまらない生活を送っていて我々は平気でいられるのでしょうか。
 「負の感情を見出すとツラいから、そういうのが出やすい『待つ』ということはしたくない。すぐに物事が進んでほしい。」という意見もあるかと思います。たしかに、「待つ」時は期待感などプラスの感情だけでなく、不安やイラつきなど負の感情も起こります(最近では、いつまでも青に変わらず進めない信号にイラつく自分がいたり、ドライブスルーにて先に3台車があるのを見ただけでイラつく知人がいたり…)し、後者の方が長きにわたり残りやすく、毎日が重く苦しいものになるのも確かです。
 でも、マイナスな感情があってはじめてプラスも光るのではないでしょうか。プラスを光らせるためには、少なからず、マイナスなものにも目を向ける必要が出てくるのではないでしょうか。その契機として、「待つ」ということに意味が出てくるのではないでしょうか。


 本書は、待つときに生じる感情の姿に徹底して向き合った記録です。書物から、認知症治療や精神医学など相手の言葉をひたすら「待つ」医療の現場から、「待つこと」とは一体どういう状態なのか、そのとき人は何を思い、何を感じるのかについて思考を広げた本であります。スパッと「こうしよう」実践的な事柄が羅列してあるものではありませんが、「待つ」ことに対し何か気になることがあった方にはもちろん、きめ細かい感情や人間らしさを追求する方にも特に推薦したいと思います。

2013年9月7日土曜日

ブログ書評第15回『昭和天皇―「理性の君主」の孤独』

ブログ書評、3回めの登場の荒戸です。
私は夏休みには戦争に関する本を一冊読むことにしています。
今年は古川隆久著『昭和天皇―「理性の君主」の孤独』を読みました。今回はこれを紹介します。


私が小学生のころまでは昭和でしたので、昭和天皇のお姿はおぼろげながら記憶にあります。私の昭和天皇に対するイメージは一言で言って『優しそうだけど少し寂しそうなおじいちゃん』なのですが、大人になるにつれて、昭和天皇に対する印象が人によって様々であることを私は知ることになります。それらは、私の素朴なイメージとは明らかにかけ離れたものでした。

確かに、学校で歴史を学ぶ中で、なぜこんなに優しそうな方が治めている国があのような戦争に突き進んでいったのか、それは昭和天皇自身が若い頃は私の知る昭和天皇とは違っていたからなのか、不思議に思っていた記憶があります。

戦争は多くの人々に計り知れない影響を与えるので、その当事者である昭和天皇に対して人々がどのような印象を持つのかというのは、その人がどの時代を生きたかということによって違ってくると思います。本によって昭和天皇の描かれ方が異なっているのもそれが一つの原因なのかもしれません。

この本は、そのような人によるイメージの違いをなるべく除いて、近年多く出てきた資料に基づいて昭和天皇の実像に迫ろうとした本で、2011年のサントリー学芸賞を受賞しています。

著者はこの本で、皇太子時代の若き昭和天皇がヨーロッパ訪問でイギリスの民主的な立憲君主制に感銘を受け、その日本での実現を理想としていたこと、また、戦争を避け、早期に終了させたいと考えており、また何度かそのチャンスがあったにもかかわらず、そのような民主的な立憲君主制への理想を持ちそれにこだわっていたがゆえに、戦争を止めきれなかった、長引かせてしまったことが描かれています。昭和天皇は戦争を止める力を持っていたかもしれませんが、それを自らの力で行うことは、彼が理想としていたリベラルな政治体制を自分で否定することになるというジレンマに直面していたことが、この本から読み取ることができます。

この本の主題は戦前から戦中の昭和天皇を描くことですが、戦後の昭和天皇についても描かれています。昭和天皇が目指したリベラルな政治体制は、戦後(昭和天皇が主導したかどうかはさておき)憲法に体現されることになるわけですが、その後の昭和天皇は、そのリベラルな政治体制が(不完全な形にせよ)実現されることと引き換えに失われた、もう取り戻せないものに対してどう行動していくか、一言で言えば「戦争責任」というものをどのように考え、行動していったのか、この本はなるべく主観を排して資料に基づいて書かれています。

私は、この後半の記述に心を奪われ、涙なしでは読むことができませんでした。人はどうしても生きていく中でもう取り戻せないものを作ってしまい、それについて責めを受け続けることが多かれ少なかれあると思います。昭和天皇は、誰よりも大きなそれを背負いながら逃げずに生きてきた人間であることが、この本の記述が冷静なものであるがゆえに鮮明に浮かび上がってきます。

自分の意思とは必ずしも言えないがやってしまったこと、自分のせいだけではなくても人のせいにできないことを背負って生きるとはどういうことなのか、どう生きるべきなのか、それと対峙し続けた結果が、私が昭和の終わりに見た「優しそうだけど少し寂しそうなおじいちゃん」であったということを、この本を通じて知ることができました。

私たちも生きていく中で少しずつ社会とのつながりにがんじがらめになっていき、自分の意志とは必ずしも一致しない行動を迫られ、その結果窮地に立たされることが少なからずあり得る世の中に生きていますが、その中でどう生きていくのか、この本はそれに対する一つの指針を与えてくれる本であると思います。

2013年8月30日金曜日

ブログ書評第14回『経済学者の栄光と敗北 ケインズからクルーグマンまで14人の物語』

みなさん、こんにちは。今年の夏も一度も自室のクーラーをつけなかったことを誇りに思うひろおかです。

今回、自分が紹介する本は東谷暁(ひがしたに さとし)さんの「経済学者の栄光と敗北 ケインズからクルーグマンまで14人の物語」という本です。

自分が経済学部で過ごしてきて大体経済学部のカリキュラムは2つに大別できるような気がします。

1つ目が、需要と供給が交わるところで価格が決まる・・・とか、政府が公共投資を行うとGDPはこんだけ上がる・・・のようにモデルを使って経済の成り立ち、理論を考えるミクロ、マクロ経済学のような理論経済学(呼び方はこれであっているか分かりませんが・・・)ともう一つが、実際、今の経済がどのような歴史をたどってきたのかを考えて分析する経済原論というものの2つです。本当はもっと細かくいろいろな分野もあるし、統計とか会計とかも大事ですし、さらに、それぞれの分野が密接に関わっているのですが、まぁ置いておいて、この本では副題にもある通りケインズの時代からはじまって経済の理論をつくっていった方々の歴史をたどります。つまり、理論ができるまでの歴史、経済学者の半生をつづっているという珍しい本です。
ただし、この本を読むとケインズの「雇用・利子および貨幣の一般理論」が理解できるとかそういうことは決してございません。むしろ、理論には数式も一切使わず、割りとあっさりとした説明のみにとどめてあり、この経済学者はどういう時代に生まれ、どういう環境や考えのもとでこの理論が生まれたのかについて書かれています。

理論やモデル、数式と聞くと一切の主観が排除されているように思えますが、経済学のそれは絶対に違います。社会の影響なんかをかなり色濃く受けています。

ケインズはシャンパンがめちゃくちゃ好きだったというエピソードを知ってもアベノミクスの今後がどうなるとかには全く理解の役には立ちませんが、前述のとおりそういう学問なので(理論+歴史)で知っておくと一歩踏み込んで考えられるような気がします。

本の中身は大半が生い立ちや時代背景と理論、功績について述べられています。残りが著者の現代経済学者への熱い批判(エール)です。これがなければもっと読みやすかったかもしれません。

経済学にあかるい人も、自分のようにそうじゃない人も現代経済学の巨人たちに親しみを感じられるおもしろい本であります。

みなさんもぜひご一読ください。
                                             ビブリオ信州 ひろおか  


2013年8月24日土曜日

ブログ書評第13回「エースの覚悟」

こんばんは。ビブリオ信州のKです。突然ですが、皆さんは野球はお好きでしょうか。僕は大の野球ファンであります。毎週金曜日になるたびに楽天イーグルス・田中将大投手の活躍を聞き、彼の偉大さに驚いているところです。
今日はその野球にまつわる本を紹介させていただきます。広島カープの前田健太選手が書かれた「エースの覚悟」(光文社新書)です。3月のWBC(ワールドベースボールクラシック)での活躍は記憶に新しいところですね。この本は一度ゼミ内のビブリオバトルで紹介した本なのですが、ここで改めて紹介したいと思います。
この本には前田選手の「本当のエースを目指し、努力する自分の姿をしってほしい」という思いが込めれらています。
球界を代表するエースと、しがない大学生。一見すると共通点がないように思われますが、この本には共感する点、参考にしたい点がが多々あります。その中から幾つか紹介したいと思います。

・プロでも練習すれば伸びる
練習はやればやっただけうまくなる。日本のエースがそう言うのです。何も野球に限定された話ではありません。日常生活の中でもそうでしょう。勉強だってやればやればやっただけ身につく。この年になっても努力の大切さについて考えさせられます。

・最大の敵はネガティブ思考
生きていればいやなこともあります。思い通りにいかないこともあるでしょう。結果が出ないときにいかに前向きに捉えられるかが、その後の結果を左右するのだそうです。前田選手はなかなか結果がでなくてもポジティブに考えることで、その後の良い結果につながったそうです。自分も大学生活の中でなかなか思い通りにことを進められず苦労したことがありますが、この前向きな考え方は本当に参考になります。

…本当はもっと挙げていきたいのですが、それだときりがなくなってしまうので(笑)、この辺で抑えておきます。プロになるまでの生い立ちや同年代同士でのつながりなど、普段はあまり聞くことのできない興味深いお話も満載です。
野球好きな方にもそうでない方にも、おすすめの一冊です。ぜひ読んでみてください。

2013年8月16日金曜日

ブログ書評第12回「かのこちゃんとマドレーヌ夫人」

こんにちは。N.Tです!暑い日が続いていますが、だらけた生活をしないように気を付けています。
さっそくですが第12回目の書評を書かせていただきます。今回紹介させていただく本は万城目学さんの「かのこちゃんとマドレーヌ夫人」です!

タイトルにでてくるマドレーヌ夫人は表紙にも描かれている茶毛の猫なのですが、このマドレーヌ夫人はほかの猫とは違い、犬としゃべることができる特別な猫です。このことが夫人と呼ばれる理由の1つされています。もう1つの名前がタイトルに出てきていますが、かのこちゃんというのはマドレーヌ夫人が住んでいる家の女の子です。この本はかのこちゃんの視点とマドレーヌ夫人の視点で話が進んでいきます。別々の視点で話が進む本にありがちな同じ話を繰り返す書き方になっておらず、うまく話が繋がっていてとても読みやすい作りになっていると思います。

この本を読んでみての感想を簡単に述べさせてもらうと、「終始ほのぼの、たまに切ない!」という感じでした。小学生になったばかりのかのこちゃんが、マドレーヌ夫人や家族や友達と過ごしていく中で成長していく姿には、ほのぼのした話なのですがとても元気づけられました。
マドレーヌ夫人とその旦那さんである玄三郎の話は、年老いた玄三郎のためにマドレーヌ夫人がとった行動や、それにともなって起こる不思議な現象には感動させられました。

この本にはかのこちゃんとマドレーヌ夫人がともに過ごした時間が書かれているのですが、読めば読むほど彼女たちの魅力にはまっていってしまいます。どちらも幸せになってほしいのですがそうもいかない、でもこれが一番よかったのかも・・・などと考えてしまいます。読み終えると切なさとともに充実感が味わえました。温かい気持ちになりたい人におすすめしたい本だと思います。

2013年8月10日土曜日

ブログ書評第11回「コンビニの買ってはいけない食品買ってもいい食品」

こんばんは。秋山です。
第11回目の書評となります。よろしくお願いします。
今回紹介する本は渡辺雄二著「コンビニの買ってはいけない食品買ってもいい食品」です。




私は普段の食事の多くはコンビニで調達しています。しかしコンビニ食はあまり健康にいいイメージがありません。最近夏バテ気味なのでコンビニ食の中でも健康によさそうな商品選びをしようと思い、この本を手に取りました。
この本は4章構成で、第一章は買ってはいけない食品、第二章と第三章は買っても良い食品、第四章では食品に関する知識について解説しています。
この本をオススメする理由は各商品の材料が食品原料、添加物、アレルギー物質が丁寧に記述されている点です。店頭ではじっくりみる機会がないので普段買っている商品に意外なものが入っていることが分かります。コンビニ食がどんなもので作られているかをまとめて知るにはいい本だと思います。私は添加物の欄に出てくる亜硝酸Naやベンゼンの単語をみて「高校時代化学の授業に似たような名前が出てきたなあ」と懐かしみながら読み進めていました。学校の授業は役に立たないとはいうけれど、少なくとも化学の知識は日々の生活の中でも役立てていけそうだ、とどうでもいいことを考えました。
本書の第一章から第三章は商品の材料構成を元に、買っていいかいけないかを解説しているのですが、説明につっこみどころが多く、あまり鵜呑みをしないほうがいいような内容になっています。コンビニストアから本書の買ってはいけないものを除いたら、ただのストアになってしまうような内容です。また解説に用いられる文章構成の種類が少なく、第三章ではネタ切れの様相を呈しています。しかしこの解説のスタイルはついつい読み進めてしまう謎の魅力があります。著者と読者との食に対する感性の違いからくる面白さがあります。
コンビニ食品選択の際の実用性という意味ではあまりオススメできませんが、自分が普段食べているものの知識を深める手掛かりとして、また読み物としておもしろいのでぜひ読んでみてください。

2013年8月7日水曜日

ブログ書評第10回『ルームシェア』

どうも2順目となります、近藤です。
更新遅くなって申し訳ないです、はい( ;∀;)

今回紹介させていただくのはこちら、「ルームシェア」です。


帯にあるとおり、こちらラブストーリーとなっております。
主人公は表紙右手の可愛い子、美央。
彼女は表紙左手の男性、陸とルームシェアをして5年来の仲なのですが、付き合っているわけではなく、恋愛感情も特にないという不思議な関係を続けていました。
ところがあることをきっかけに美央は陸に対して「彼氏(仮)」になってほしいと頼むわけですね。ここから少しずつ関係が変化していって…
ってな感じのストーリーとなっています。

後半は結構ありがちな内容な気もするのですが、恋愛小説はこの作品が初めてだった自分には結構衝撃でした。
キーワードとなっているのは「運命の人」という考え。これがどんな意味なのかは是非読んで確かめてみてほしいです。非常に考えさせられます。

さて、良くも悪くも結構薄く、2,3時間もあれば読めてしまうので、この本は一気に読んでしまうことをお勧めします。
短時間な分、後半の切なさがどっと来ます。非常につらいです(笑)

大切な人がいる人にも、いない人にもぜひ読んでほしい本です。
「運命の人」とはいったい何なのか…皆さんも今一度考えてみませんか?

2013年7月26日金曜日

ブログ書評第9回 『「時間」を哲学する』

こんにちは。代表のスズキです。

7月20日に行われました「ビブリオバトル@丸善松本店with信州大学」ですが、
予想以上の参加者数にビックリ!
運営に協力してくださった皆様、ご観戦・参戦してくださった皆様、どうもありがとうございました。
 

さて、今回紹介する本は、
『「時間」を哲学する』(中島義道、講談社現代新書、1996年) です。













人生が「アッという間に過ぎる」あの感覚は何に由来するのか、
真夏にストーブの前で座る1分間が1時間にも感じられるのは何故か、
過去の記憶や夢はどこへ行ってしまったのか、等々
時間についての疑問は、誰もが一度は持ったことだろうと思います。

本書では、夢と人生の不思議に触れながら、人生の短さとは、時間の速さとは何かを考察しつつ、
そこに度々現れる「過去」の在り処が提示されます。
「過去はどこへ行ったのか」という問いを精査し過去の正体に踏み込み、その後で、未来や現在へと思考を移していきます。

ただ、今回私が共感を覚え薦めたいと思ったのは、単に「時間論の紹介」やその議論の巧みさによりも
当たり前過ぎることに真っ向から考え抜くという態度を見せつけられたところにあります。

世の中には、当たり前過ぎて人がほぼ目も向けないような事柄がありますが、その中に
人に災厄をもたらすものが含まれていたらどうでしょうか。良からぬことがあっても、その原因に
目も向けられず、不幸を被り続けてしまう…
そんな時に、当然過ぎることにも目を向けるような習慣と実践が必要なのではないか。
そのことに気付かせてくれる点でも、本書の価値はあると思います。

難解な部分もあるかとは思います(実は私も、あまり分かってない!)が、極端な文体ではなく、
読みやすさも保たれています。ぜひ、読んでみてください。

2013年7月19日金曜日

「ビブリオバトル@丸善松本店with信州大学」まであと1日!!!

いよいよ明日に迫りました、「ビブリオバトル@丸善松本店with信州大学」!
午後4時から、丸善松本店地下一階イベントスペースで開催します。
入場無料・ご予約不要・お一人でもグループでも観戦大歓迎ですので、お気軽に来て下さいね。



天気が心配だったのですが、どうやら晴れで、暑くなりそうです。
ちょっとした夕涼みに、万一夕立が来たら雨宿りに・・・ということで観戦にいらしても大丈夫です。
5人のバトラーの素敵な本の紹介を楽しんでいって下さい。

「ビブリオバトルって結局どんなことするの?」という人もいらっしゃるでしょうから、
今日は一日前ということで、ビブリオバトルのルールを確認しておきましょう。

1.発表参加者が読んで面白いと思った本を持って集まる.

2.順番に一人5分間で本を紹介する.

3.それぞれの発表の後に参加者全員でその発表に関するディスカッションを2~3分行う.

4.全ての発表が終了した後に「どの本が一番読みたくなったか?」を基準とした投票を参加者全員一票で行い,最多票を集めたものを『チャンプ本』とする.

これがルールです。簡単ですよね。
(補足説明はビブリオバトル公式サイトをご覧ください。)

今回は既に出場者(バトラー)5名は決まっておりますので、
バトラーのプレゼン5分間→観客の皆様からバトラーへの質問タイム2分間を
5人が順番に行います。
(どんな本が紹介されるかは当日その場までの楽しみ♪)

質問はその場にいるどなたがしてもOK。ただ、本やプレゼンターへの批判は無しにして下さいね。
楽しませたり、和ませたりする質問は大歓迎です!

最後は投票です。
その場にいらっしゃる皆様全て一人一票で、どれが一番読みたくなったかで『チャンプ本』つまり「本のチャンピオン」を決定します!
「バトル」というと優劣をつけると思いがちですが、ビブリオバトルは人の優劣や本の優劣を付けるものではないので、誤解されないで下さいね。あくまで、ゲームとして楽しむための仕掛けですから。
投票や「チャンプ本」の意図は、公式サイトや谷口さんの著書『ビブリオバトル』を是非ご覧ください。

これだけのルールで、その場の雰囲気によって様々な楽しさが味わえるビブリオバトル。
文字だけでは伝えきれませんが、一度来ていただければきっと楽しさがわかっていただけると思います。

それではいよいよ明日午後4時、丸善松本店地下一階イベントスペースでお待ちしております!

ブログ書評第8回『「みんなの意見」は案外正しい』

こんにちは!顧問の荒戸です。
ブログ書評もサークル員7名が一周りして、2周めに入りました。
明日はビブリオバトル@丸善松本店with信州大学ですが、ブログ書評もいつもどおり更新していきます!

今日紹介するのは・・・
ジェームズ・スロウィツキー『「みんなの意見」は案外正しい』(角川文庫)です!


皆さんは、自分ではよくわからない問題を解決しなければならないとき、どのように自分の行動を決めるでしょうか?

家族に相談?ネットで調べる?会議で決める?先生や専門家に従う?
いろいろ決め方はありそうですね。

この本は、「多様な属性から集めた多くの人(みんな)の意見を総合すると、一人の専門家の意見より正しいことが多いよ。」というメッセージを込めた本です。

知識や経験が多くあって、ずっとそのことを考え続けている専門家より、素人の意見を多く集めた方が正しい予測ができるなんて、なんだか不思議ですね。でも、実はそのような例というのは世の中に非常にいっぱいあるのです。この本にも、その例がいっぱい述べられています。

実はこの考え、結構昔からあったのですが、情報技術やインターネットが発達して「ビッグデータ」という言葉もよく聞かれるほどに、「みんなの意見」を集めるためのコストは急速に下がったこともあり、大変注目されています。
社会全体に影響を与える決定が、少数の人達だけでなく、「みんなの意見」によって決めたほうがうまくいくのだとすると、とても夢のある話だと思います。もしかすると近い将来、そのような社会になるかもしれませんね。

ただちょっと待って下さい。この本の題名は、『「みんなの意見」は案外正しい』です。
つまり、そううまくいかないこともある。どんな時にうまくいかないか、なぜうまくいかないか、そんな例も、この本にはいくつか載っています。

何にでも使える最高の決め方なんて、この世には無いのかもしれませんね。
どういう時に、どんな方法で決めたら良いか、それも、私たちの決めなければいけないことですし。
でも、その決め方の選択肢の一つに「みんなの意見で決める」というものも結構うまくいく可能性があるということを知ることができるだけでも、この本は読む価値があると思います。

ビブリオバトルも、一人一票、チャンプ本をみんなで決めるゲームです。
これが、偉い人の独断で決まってしまったら、きっとゲームもつまらなくなってしまいます。

「決め方」をどうやって決めるか。そんな頭の痛そうな問題のヒントにもなるこの本、楽しく読めると思いますので、皆さんもぜひ読んでみて下さい!

2013年7月18日木曜日

「ビブリオバトル@丸善松本店with信州大学」まで残り2日!!

あっという間に、あと2日となりました!
「ビブリオバトル@丸善松本店with信州大学」、準備も着々と進んで、私たちもワクワクしております。

一昨日、昨日と、ビブリオバトルの紹介を兼ねてブログを書いてきましたが、今日は、書籍を2冊紹介したいと思います。これを読めばビブリオバトルが分かる!

1冊めは、考案者の谷口忠大さん著、その名もズバリ『ビブリオバトル』(文春新書)です!
http://www.bunshun.co.jp/cgi-bin/book_db/book_detail.cgi?isbn=9784166609017
「本を知り人を知る書評ゲーム」という副題のとおり、ビブリオバトルで人がつながることについて、谷口さんの思いが綴られています。

もう一冊は、ビブリオバトル普及委員会編著、『ビブリオバトル入門』(INFOSTA)です。
http://www.infosta.or.jp/publish/bookannai/biblio_battle.html
「ビブリオバトル普及委員会」という、ビブリオバトルを広めるための全国組織の皆さんによる一冊。
歴史やコツ、全国の個性的な取り組みなどが書かれていて、読めば自分でも開催できるようになれるかも。

ぜひ書店で手にとってみて下さい!

また、ビブリオバトルは動画も数多く配信されているので、
雰囲気を味わいたい方はyoutubeで「ビブリオバトル」と検索してみて下さい!

本や動画で興味を持ってから実際のビブリオバトルを見ていただくと、
より生ならではのスリルやライブ感を楽しんでいただけると思います。
そんなナマのバトルが松本で楽しめる「ビブリオバトル@丸善松本店with信州大学」は
明後日7/20(土)午後4時から、丸善松本店地下一階イベントスペースにてスタートです。

夕方のまだまだ暑い時間帯、涼みがてらに熱いバトルの観戦に皆様是非お越しください!


2013年7月17日水曜日

「ビブリオバトル@丸善松本店with信州大学」まであと3日!


いよいよ開催まであと3日となりました。
7/20(土)午後4時からの「ビブリオバトル@丸善松本店with信州大学」、皆様のスケジュール帳にはもうご記入頂いてますでしょうか!

実は、ビブリオバトルは本を紹介する人だけでは成立しません。観戦・質問・投票する方と一緒に作り上げる「本を通じたコミュニケーションの場」なのです。
とはいえ、難しいことはありませんので、お気軽にお越しくださいね。


今日は、ビブリオバトルを象徴する一つの言葉を紹介します。それは、

「人を通して本を知る、本を通して人を知る」


です。

ビブリオバトルに出場したり観戦したりすると、自分が今まで手に取ろうと思っていなかった本がいきいきと紹介されていて、とても読んでみたい気持ちになることがあります。
これが「人を通して本を知る」です。いままで読んだことのないジャンルは、なかなか1人ではいい本を見つけにくいですよね。ビブリオバトルを観戦にいらして、未知の領域に踏み出す最初の一冊を見つけてみませんか?

そして、「本を通して人を知る」。ビブリオバトルでは、本を知ることはもちろん、その本の紹介をとおして、その人自身をより深く知ることができるのです。

意外な本を読んでいたり。
普段寡黙な人が語りだすと止まらなくなったり。
初めて会ったのに趣味が合うことが分かったり。

肩書きや年齢を超えて、素敵な本や人との出会いがあるかもしれません。

「ビブリオバトル@丸善松本店with信州大学」も、多くの人にお越しいただき、本を通じた人のつながりが生まれる場になればよいなあと考えております。

7/20(土)午後4時、丸善松本店地下1階イベントスペースにて開催します。
席数に限りがありますので、お早めにお越しください!

2013年7月16日火曜日

「ビブリオバトル@丸善松本店with信州大学」開催まであと4日!

今週の土曜日、7月20日に丸善松本店にて開催される「ビブリオバトル@丸善松本店with信州大学」まで一週間を切り、あと4日となりました。

今回は信州大学から学生・教員各1名と、市民の方々3名の計5名のバトラーが集結しました。
大変楽しみなバトルが展開されるのは間違いありません!

今日から開催前日までは、ビブリオバトルの紹介も兼ねて毎日更新します。

「ビブリオバトルって何?」という方、そんな方にはまずビブリオバトル公式サイト
http://www.bibliobattle.jp/
がオススメです!
ビブリオバトルのルール・歴史・ニュースが満載です。
ぜひご覧ください!

公式サイトで興味を持たれた方は、是非「ビブリオバトル@丸善松本店with信州大学」で生のビブリオバトルをお楽しみ下さい。

「ビブリオバトル@丸善松本店with信州大学」は、7月20日(土)16:00から、丸善松本店地下一階イベントスペースにてスタートします。
入場無料・ご予約不要です。
席数に限りがございますので、当日はお早めにお越しください!


2013年7月13日土曜日

ブログ書評第7回『勝ち続ける意志力』

皆さんはじめまして、ビブリオバトル信州のひろおかです。
これからもこの書評は週一更新(予定)のリレー形式で続けて参ります。もし、よろしければメンバーそれぞれ個性あふれる書評を続けていきたいと思いますのでご覧いただけたら幸いであります。

さて、今回自分が紹介したい本は梅原大吾さんの「勝ち続ける意志力」という本であります。著者である梅原大吾さんは“プロゲーマー”という摩訶不思議にも思える職業をしてらっしゃる方であります。ゲームと聞くと興味のない方には子どもの遊び道具のように思えるかもしれません。そして、そんなものを生業にするなんて…と思うかもしれません。しかし、「それが間違いであった」とこの本を読んでいただけたらきっと思っていただけるはずです。

この本は、前半に梅原さんのプロゲーマーになるまでを述べた自伝的部分と後半に現在プロゲーマーとしてもっとも活躍している彼のゲーム(仕事)との向き合い方について述べた自己啓発部分という2つの要素からなります。

最初に生い立ちを記した自伝のところでは、なぜ彼がプロゲーマーという職業を目指したかが語られます。「どんだけ幼い頃から達観してたんだよ!」というぐらいに思考が現代に生きる職人そのものです。そして、世間からの逆風や幾多の挫折の中で一度ゲームをすっぱり辞めて、自分取り巻く環境を変えてみるも、やはり自分にはゲームしか無いと意を決し、もう一度、ゲームの世界に帰っていく姿が記されています。
プロになってからの自己啓発的部分では、ゲームという極めて特殊なジャンルで培われたものだから、普遍的であるとは断言できない。それでも、ここまでの生涯通じて追求し続けたことで学び、実践して得た勝ち続ける力は、紛れもなく「本物」であると自負できる。と述べていて、ゲームという明確に勝敗が決まるものだからこそ、努力の仕方、ライフサイクルの作り方などが勝ち続けられるようにわかりやすく述べられています。


かつて、ソニーのお荷物だったゲーム開発部門が今ではソニーという企業を支えるようになり、Wiiで健康管理を行ったりできるような時代に変わりました。ゲーム自体もゲーム業界もそしてプレイヤー達も変わっていく中で生まれたThe beastことプロゲーマー梅原大吾の変わらない熱い魂を、勝ち続ける意志力を、ゲームなんて…と思っているあなたに手にとって感じていただきたく今回紹介させて頂きました。
余談ですが、自分はこの本でビブリオバトルに出て負けました(小声)…
この本でも紹介されている排水の逆転劇の動画URLはこちら 観客のテンションがすごい!!
https://www.youtube.com/watch?v=XeM0rH_4ung

2013年7月4日木曜日

ブログ書評第6回『裏切りの特急サンダーバード』

初めまして!ビブリオ信州のKです。1年も半分が過ぎたという現実が信じられず、さらには期末試験が今月から始まることも信じられません…。…勉強します。はい。

さて、今回紹介させていただく本は、新潮文庫から出ている「裏切りの特急サンダーバード」という推理小説です。著者は十津川警部シリーズでおなじみ、西村京太郎さんです。

舞台となるのは、北陸本線を走る特急「サンダーバード」。犯行グループがこの特急をジャックし、身代金を要求する…
とまあ、推理小説にはよくある展開のように感じるのですが、そうはいかないあたりがなかなか面白いところであるです。
まず、この事件の首謀者は大富豪であることです。つまり身代金は必要なく、彼はゲーム感覚で事件を起こしたのです。なぜか。簡単に言ってしまうと「面白いことをしたかったから」だそうです。おそらくこの人は物的な欲望は満たしているはずです。彼は満たされすぎた故にこの事件を起こそうと考えたのなら、「豊かすぎる」のもどうなのだろうか…と私は考えてしまいました。

そして、彼は完全犯罪をもくろむものの、ひょんなことから首謀者は逮捕されてしまいます。この展開が実に意外でした。本当に、本当に小さなほころびからこの首謀者の思惑が崩れてしまったわけです。人生何が起こるかわかりません。

あらすじを語るだけでも相当な量になってしまうので、このあたりでとめておきます。すみません…!

私は西村京太郎さんの本を読むのは初めてだったのですが、ハラハラドキドキしながら読むことができました。またこの本は鉄道を題材にしていますが、鉄道の知識がなくても(自分もそうだったのですが)、全く問題なく読めます。
なにより、「そんな展開があり得るのか!」と、いい意味で期待を裏切られました。読者を飽きさせない展開も見どころです。

ぜひ読んでみてください!

2013年6月29日土曜日

ブログ書評第5回『捨てる力』

こんにちは!第5回目のブログ書評を書かせていただきますN.T.です!
慣れない書評ということもあり、つたない文章ですがご了承ください。。。

さて、今回紹介させていただく本は羽生善治さんの『捨てる力』(PHP文庫)です。
偶然にも、前回の秋山君が紹介した本の著者がかぶってしまいました。しかし僕はこの本を書評に書くと、3週間前には決めていたので決して秋山君の書評に影響されたわけではありません!
逆に言えば、書評が連続してしまうほどの本を書く方なんだともいえますよね(笑)

前置きはこのくらいにして本の紹介に入らせていただきます。この本は棋士である羽生善治さんが書かれたもので、表紙には羽生さんがドドンと写っています。
ひとつの手を選ぶことは、それまで考えた手の大部分を捨てること。
棋士の羽生さんらしく、また羽生さんだからこそいえるような言葉がたくさん詰まっている本になっています。何かに悩んだりしたときや行き詰ったときなどに解決するためのヒントとなる言葉が羽生さんのエピソードとともに語られています。
この本の帯には、「忘れることは次に進むための大事な境地」とありました。忘れることが得意な僕にピッタリの本だとおもい、この本を読んでみました。
実際に読み進めていくと、捨てる力というタイトルから、いかに捨てるか、捨ててどうするのか、といった捨てることに関して語っている本と思いきや、捨てることについての記述は少しだけでした(笑)  その点からみると少し物足りない感じも受けましたが、それを補って余りある名言の数々に圧倒されました。
羽生さんが将棋を始めたころから今に至るまでのエピソードとともに語られる言葉はとても説得力があり、心に響くものがたくさんありました。

ここで、いくつかの言葉を紹介させていただきます。
まず、「知識は単に得ればいいというものではなく知識を積み重ねて理解していく過程で“知恵”に変える必要がある」 という言葉なのですが、この言葉をみたときにゼミで先生がいっていたことを思い出しました。ただ勉強するのではなく、どうしてそうなるのかという疑問を解決していくことに意味があり、これから先においての勉強のやり方を身に着けられる、とおっしゃっていたことが理解できた気がしました。
また、「プレッシャーはその人の持っている器に対してかかるもの」という言葉は、プレッシャーを感じやすい僕としては非常に勇気づけられるものでした。これからプレッシャーを感じたときには、自分の器はこんなことでプレッシャーを感じるほど小さくはないはずだ!と言い聞かせて乗り越えたいと思います(笑)

ここで挙げた言葉は、本で紹介されている数ある名言のほんの一部ですが、いまの僕にとって特に心に響いた言葉です。
おそらく将来この本を読み返したときに心に響く言葉は変わっているはずです。そこから自分がどのように成長したのかが分かるのではないのかと考えています。十年後に読み返してみて、いまの自分ではあまり理解出来なかった言葉が、心に響くようになっているかもしれません。
読み終えてみて、この本はいくつになっても何度でも読み返すことができる本なのではないかと僕は感じました。何かに悩んだときや頭の中がスッキリしないときは、またこの本を広げたいと思います。

2013年6月27日木曜日

「ビブリオバトル@丸善松本店with信州大学」開催決定!

こんにちは!
ついに、松本で初の書店ビブリオバトルの開催が決定しました!
7月20日(土)、丸善松本店にて開催されます。

週末の午後、入場無料・ご予約不要ですので、多くの方々のご観覧をお待ちしております。
みなさんの一票でチャンプ本を選びましょう!
(今回はプレゼンターの募集は行なっておりません。ご了承下さい。)


「ビブリオバトル@丸善松本店with信州大学」
7月20日16:00~
丸善松本店地下1階イベントスペース

主催:丸善松本店
協力:信州大学経済学部、ビブリオバトル信州


お問い合わせはお気軽に biblioshinshu@gmail.com までお願いいたします。

2013年6月22日土曜日

ブログ書評第4回『直感力』

こんばんは。ビブリオバトル信州の秋山です。
第四回目の書評を書かせて頂きます。

今回紹介する本は羽生善治『直感力』(PHP新書)です。



私たちは日々生きていく中で多くの選択肢に直面し、決断を迫られます。
その決断を最終的に後押しするものが「直感力」です。

例えば今あなたはテストを受けているとします。残り時間が半分を切ったところで、全問題の内4分の1しか解けていないとします。このあとどうしますか。
とりあえず全問解こうとおおざっぱに解答する人もいれば、できそうな問題を探して確実に点数をあげようとする人もいるでしょう。予定通り解けなくて自棄になる人もいるかもしれません。このような色々なパターンの中からよりよい選択肢を選ぶセンスが「直感力」です。

直感力と聞くと、先天的なものでどうしようもないものと思われるかもしれません。しかし、直感力は鍛えることができます。大学受験で模試を受ける回数を重ねるごとに、「なんとなく」うまく解けるようになったはずです。この「なんとなく」がうまくなるのが直感力です。直感力は模試のように経験を積み重ねるごとにその力を増していきます。しかし、ただ経験を積み重ねるだけでは不十分です。この本には直感力を磨くのに必要な要素が書かれています。

ビブリオバトルは5分間という限られた時間の中で本を紹介します。残り1分になるとアラームが鳴るのですが、その時のバトラー(本の紹介者)の反応は様々です。その中で時間内にうまく話し終えられる人は直感力の高い人なのだと思います。ビブリオバトルで気持よくお気に入りの本を紹介できるように、『直感力』を読んで直感力を養ってみませんか。



2013年6月16日日曜日

ブログ書評第3回『都会のトム&ソーヤ』

はじめまして、ビブリオ信州の近藤彰則です。
長らくブログ書評の更新を滞らせてしまっていたのですが、今後ちょくちょく更新する予定ですので、時々見に来てくださるとうれしいです!


さて、今回僕が書評を書かせていただくのは、『都会のトム&ソーヤ』というシリーズ小説です。著者は、児童向けのミステリを多く書かれている「はやみねかおる」さんです。区分け的には児童文学となっていますが、大人でも十分に楽しめる作品です!

マーク・トウェインの「トム・ソーヤの冒険」に由来したであろうタイトルから推察できるように、児童向け冒険小説です。ちなみに「トム・ソーヤの冒険」は読んだことがないので内容にオマージュが入っているのかはわかりません(汗
冒険といいましても、タイトルの通り舞台は都会(まち)。主人公の内人(ないと)と創也(そうや)は、テレビ局やデパート、果てはマンホールの底の下水道だったりと、様々な場所を冒険することになります。
冒険の目的は一つ、「究極のゲーム」を作ること。なんでゲームを作るためにそんなところを冒険することになるんだよ?というのは、ご自分の目でお確かめください(笑

ストーリは置いておきまして、この本の魅力は何かと聞かれれば「夢を追う人たちが書かれていること」なんじゃないかと僕は答えます。
中学生である主人公たちの夢(正確には創也の夢)は、先ほどの通り「究極のゲームを作ること」ですが、それ以外の登場人物たちもそれぞれの夢といいますか野心といいますか、目標のようなものを持っているんですね。そんな彼らはみな活き活きとしていて、(本書が児童文学であるからなおさら)夢を追うことの楽しさを思い知らせてくれます。

はてさて、冒険ものとして本書を紹介しましたが、作者のはやみね氏がミステリ作家であることもあり、本書がミステリー小説でもあることを最後に添えておきます。コテコテのミステリ作品ではありませんが、そういった類がお好きな方にもぜひ読んでいただきたいなと思います。


この本を初めて読んだ中学生のころ、胸をときめかせながら読んだことを記憶しています。はたしてその少年時代の夢を実現できそうかと言われれば微妙なところですが、夢を追うひたむきな心だけはずっと忘れないでいたいものですね。

2013年5月1日水曜日

ビブリオバトル信州新歓のお知らせ

下記の日程でビブリオバトル「春の新歓スペシャル!」を行います。
・場所 共通教育第24番講義室
・日時  第一回 4月15日(月)19:30~
     第二回 4月22日(月)19:30~
        第三回 5月1日(水)18:30~
新入生、在学生ともに歓迎します。
お誘い合わせの上、ご参加ください!

ブログ書評第2回『モモ』

みなさん、はじめまして。
ビブリオバトル信州の代表のスズキです。

評論から小説、過去のバトルで紹介した本から、5分ではとても紹介しきれない本まで、
私も幅広く紹介していきます。


さて、書評2回目の今回に紹介するのは、
ミヒャエル・エンデ『モモ』(岩波書店)です。




日々時間に縛られているようで、気づけば時間を持て余している今日この頃、
(この記事を書いている今は大型連休の中頃ですので、時間を持て余す危険性大!)
中身に触れつつ、私も「時間」について考えてみます。

…と思いましたが、これがなかなか難しい。そこで、まずは「時間を考えるのが何故難しいのか」、
その辺りを探ろうと思います。


各自で難しさを感じる理由はもちろん違うでしょうが、一つには、その起源を探ろうとした時に
「上手くその起源を言えない」ことに由来するところがあるのではないでしょうか。
音楽や舞踏、各種の儀礼がいつ始まったか正確には述べられないように、「時間」も
その歴史の全貌を明らかにはできないようになっていて、そこに難しさがあるのではないかとおもいます。
たしかに、「日時計」や「砂時計」など紀元前からある(とされている)時計の歴史から
時間の歴史を決めようとするのもアリ、な気はしますが、正確にその起点を言えない以上、
「歴史」として、どこか歯切れが良くありません。

また、「なぜ日時計などは発明されたのか」など「古代人の動機」を探ろうとしても、(プロである
考古学者にはわかるとしても、)一介の民間人である私には到底たどり着けそうにありません。

なので時間は、「起源はわからないが、はるか昔から人に知りたがられていた
取り扱いの難しいもの」 として見る必要があるのではないでしょうか。




さて、もう一つの考察したい問いは、「時間は誰のもので、どう使うべきか」ということです。
「時間どろぼう」に時間を盗まれた人々は、「自分の時間」がもったいないと、ケチな人生を送る。
時を司る「マイスター・ホラ」に導かれ「モモ」は自らのココロにある「時間の花」を見る。

何だか、人は自分の時間を最初から持っているようですが、少し違う気がします。
自分の時間をもったいないとするばかりに、争いが起こる…回避するにはどう考えるべきか。


先達の智慧と同じく、時間も「他者から贈られたもの」として捉える方が良いのではないでしょうか。
また、それを「他者のために使う」という発想も必要かと思います。

時刻にせよ季節にせよ、自分で発明した時間を持っているという人は現代においてはまずいないでしょう。
「体内時計」のように自分自身で決めた時間を自ら自由に行使するのは問題ないでしょうが、
他者が作った時間をあたかも自分が作ったもののように見せ振る舞うのは、やはり傲慢と言えるでしょう。
その傲慢さを振り払うこと、そして、他者のために自分が譲り受けた時間を使うこと。
そこにカギがあるのではないでしょうか。

「時間どろぼう」に対抗し、有意義な時間を過ごしていると見られる者たちの共通点
(他人の話を聞く、他人を助ける、時間を配る…)
としても、傲慢さを捨て自分の時間を贈与する姿が挙げられます。



…何だか私的考察に終始してしまい恐縮ですが、最後に一言。
「時間って、考えるのは難しいけど、自分の時間はとにかく他人のために使いなさい」
この本はそんなメッセージを投げかけて、ココロをあたため、人生を軌道修正してくれるはずです。
「えっ、児童文学!?」という方も、映画は見たが本はまだ…という方も、この機会に是非読まれては
いかがでしょうか。
私も、おもしろい時間論がありましたら紹介したいと思います。




ビブリオバトル信州・代表 スズキ


2013年4月4日木曜日

ブログ書評第1回『統計学が最強の学問である』

信州大学新入生の皆さん、入学おめでとうございます!
ビブリオバトル信州の顧問をしてます、経済学部講師の荒戸寛樹です。

ビブリオバトル信州は、書評ゲーム「ビブリオバトル」を楽しみ、信州に広めていこうという学生サークルです。
まだ2年目の若いサークルですが、徐々に信州にも広がりつつあるビブリオバトルをさらに盛り上げていきたいと思っています。
本好きの方、本が知りたい方、イベントを作ってみたい方を幅広く募集しています。
新歓の日程は↑をご覧下さいね。


てなわけで、今年度からの新しい企画として、ブログ書評を始めることにしました!
小説やラノベからドキュメンタリー、絵本、写真集まで、
ビブリオバトル信州各メンバーが得意としている分野の本を週一回ほどアップしていく予定です。

記念すべき最初の本は、新入生におすすめするこの一冊、
西内啓『統計学が最強の学問である』です。


大学に新しく入った皆さんも、上級生の皆さんも、「そろそろどんな授業を取ろうかなあ」と考えているところですよね(そうじゃないなら、そろそろ考えはじめましょうw)。

授業選びの中で、「統計学」って、(特に上級生は)典型的に避けちゃう授業じゃないかと思います。数式まみれの堅っ苦しい学問で、いっぱい勉強しなきゃいけないし、でも何故か必修になっているし・・・しょうがない、友だちからノートと過去問もらって暗記してなんとか乗り切るか・・・みたいな。

でも、そんな嫌われ者の「統計学」が、なんだかエキサイティングでSFチックで、だけど実際に人の役に立っている、身近なスグレモノに見えてきちゃうのが、この本。
例えば医学では、原因不明の疫病の原因は何かを探るために、統計学が使われています。実際、この本によれば、非常に簡単な統計のテクニックだけで、10万人の命を助けた例が挙げられています。他にも、工学、情報学、経済学、経営学、社会学、心理学、果ては、なんと歴史学や文学にいたるまで、もはや統計学が仕事にも学問にも欠かせない強力なツールになっていることがスイスイわかります。

私の専門であるマクロ経済学でも統計学の力をいっぱい借りていますし、マクロ経済学に近い分野で貧しい国の人を救うための研究分野である「開発経済学」でも、この本に載っている「ランダム化比較実験」という手法が使われています。

まさに、統計学は「最強の学問」です。

大学の授業で統計学なんてもうやだー!と思ったら、この本を持って先生に尋ねてみて下さい。「先生、この授業の統計学で、人は救えますか?」と。いい先生だったら、統計学がどれだけ人の役に立っているか、きっと熱く語ってくれるはずだと思います。

しかも、この本はそれだけじゃないのです。
言葉と絵だけで、基本的な統計テクニックが直観的にわかっちゃう。おそらく、大学で難しい数式を使った授業がされていても、そういう直観的なイメージを掴んでおくと、単位も取りやすいと思いますよ!そして実は、そういう直観的な理解こそ、大学の先生方が学生に身につけて欲しいと思っている一つの重要な力なんです。
(でも、数式やコンピュータを使った考え方もちゃんと勉強しましょうねw!それが単位を取るだけじゃなく、「ちゃんと」人を救える人になるための道だと僕は思います。)

この本、いま、激売れです。街の本屋さんでも、すぐ見つけられます。
ぜひぜひ、読んでみて下さい。

最後に、この本に引用されている、Googleのチーフエコノミストであるハル・ヴァリアンという人(←この人はスゴい経済学者です!)の言葉を書いておきます。

「私はこれからの10年で最もセクシーな職業は、統計家だろうと言い続けてるんだ。」

あなたも、この本を読んで、今よりもっと、セクシーになってみませんか?


ビブリオバトル信州・顧問
信州大学経済学部講師 荒戸寛樹