2015年9月19日土曜日

ブログ書評第32回『新釈 走れメロス 他四篇』

夏休みの宿題第三弾、9月のブログ書評担当、近藤です。
前半のうちに書くつもりだったのですが、気づけば9月も折り返して、あと10日ほどしかないんですね…
信州は既に夏も終わりと言った感じで、秋の音がもう軒先から聞こえてくるようです。
(夜は寒いくらいなので、もはや冬なのでは……などと思ったり)

今回紹介するのは森見登美彦さんの『新釈 走れメロス 他四篇』です。
ざっくり行ってしまえば、有名な短編を森見ワールドでリメイクした作品。
収録作は『山月記』『藪の中』『走れメロス』『桜の森の満開の下』『百物語』の5つです。




その中でも、タイトルにもある森見版『走れメロス』を少し紹介しましょう。

主人公の名は芽野史郎、某京都の大学に所属する青年です。
ある日彼は、大学内の暴君、図書館警察長官に、反抗し捕えられてしまいます。
捕まった彼は、「大学祭のステージの上で、ピンクのブリーフ一丁で踊る」刑に処されることに。
そこでやはり彼は、姉の結婚式に出なければならないから1日の猶予をくれと言うわけです。
その後、身代わりとして連れてこられた芽野の親友、芹名は長官に向かってこう言い放ちます。

「彼は戻らんぜ」

そう、芽野史郎は、「走れメロス」の主人公としてあるまじきまでに、捻くれた性格の持ち主だったのです……
当然それに対して長官は激怒します(笑)
こうして、親友を見捨てるための、芽野の逃走劇が始まることになります。

とまあ、どれもこんな感じで一癖も二癖もある大学生を主人公として綴られています。
総じて森見さんの描く大学生はあくの強いキャラクタが多く、とてもコミカルに描かれているので、この作品でもそれが魅力の一つかなと思います。
あとは情景描写から作者の京都愛が溢れ出ていて、読んでいるときの没入感は無類です。

当然、原典の作品を踏襲した設定なので、読んだことがあればクスりとできるのではないかと思います。
また、他の森見作品との緩いつながりもあるので、それらを知っていればより楽しめること間違いなしです!
もちろん、森見作品に触れたこと無い人にもお勧めしたい一冊です。

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