こんにちは、スズキです。
ブログ書評、復活します!
今回ご紹介する本は、吉見俊哉『大学とは何か』(岩波新書1318、2011年)です。
この書評を書いている今日は8月8日ですが、夏の大学と言えば、前期のにぎわう姿から一変して閑散とした場所になり、新たな一面が垣間見えます。高校生にとっては、オープンキャンパスという印象が強いでしょうか?
そんな「まったり」感とは対照的に、世間では大学の問題がさかんに議論されています。学生の学力低下、全入化傾向、教養教育の崩壊、若手研究者ポストの不安定化、グローバル化・・・深刻で、かつ、広く社会に影響する問題もあり、一刻も早くクリアーすべきであることはたしかに言えると思います。
ただ、そのような議論には「何かが欠けている」ように思えるのです。著者も指摘するところですが、大学という概念・システムを根底から問い直す動きが弱いのではないでしょうか。歴史的に、大学はどのようにして生まれ、いかにして変化・成長してきたか。そのような、大学の「人となり」を再確認する作業が、現在の議論に加えるべきものではないでしょうか。
本書は、大学の生成の変遷とその背後にある歴史を追いかけることで、現在叫ばれている問題の淵源がどこにあるのか、未来の大学や知のありかたはどのようなものかということを議論したものです。中世ヨーロッパに始まった大学とはどのような制度だったのか、近代に入り大学はどのようなものになったか、開国以後「輸入」されたのち日本では大学教育がどのように作り上げられ現在に至るのか、等々、大学を歴史的に問い直すものです。
巷の新書にも大学の諸問題を議論するものはありますが、やはり現在にのみ目がいってしまい、話を深めているとしても、その話題が大学概念ではなく他の領域であったり。それはそれで良いのでありますが・・・何か「腑に落ちない」ものがあったのです。同じ大学論としても、それら「告発本」とは一線を画すかたちで本書に読みごたえを感じています。
大学が気になるという方はもちろん、現在の大学生、かつて大学生であった人、これから大学生になろうとする人にも是非読んでいただきたいと思います。
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