2015年8月31日月曜日

ブログ書評第31回 『終戦のローレライ I』


大学生の夏休みはまだ半分ある!第2回ブログ書評は小田が担当します。
今回紹介するのは「終戦のローレライ I」。亡国のイージスなどで有名な福井晴敏さんの作品です。

太平洋戦争中、ナチスドイツ降伏後の絶望的な状況にある日本。国を失ったナチスドイツの潜水艦が特殊兵器「ローレライ」を日本に運ぶも、米海軍の追撃により五島列島沖に「ローレライ」は置き去りになってしまう。
海軍少佐 絹見真一を艦長とした潜水艦 伊507は日本の運命を左右する「ローレライ」の回収に向かう。

文庫本では全4巻あり、1巻では物語の始まりと様々な伏線が張られているのですが、長期の戦争によって疲弊した日本の様子や登場人物の憂いが描かれています。海軍が特攻兵器に重きが置かれていく様に諦めのような感情を抱く主人公の心情、個人的に好きな描写でもあります。
また詳細なミリタリー表現もこの作品の魅力です。大まかには専門用語や常識について説明がなされているのですが、興味が湧いた僕は読みながらスマホで検索していました。軍隊に興味のない方、その手の知識が全くない方には取っ付きにくい本かもしれません。その点は、少し前に話題となった「永遠の0」(百田尚樹)と同じかもしれません。

終戦70年ということでいろんな作品が話題になっていますが、この本でみなさんも考えてみてはどうでしょうか。(小田)

2015年8月16日日曜日

ブログ書評第30回『大衆教育社会のゆくえ』

みなさんこんにちは!ビブリオバトル信州の村上です。
8月も半分が過ぎてしまいました。今年度で大学生としての生活が終わる(予定の)身としては、「もう1/4も夏休みが終わってしまった…。」と、かなりブルーになっております。ビブリオバトル信州では夏休みの課題として、ご無沙汰していたブログ書評を復活させることとなりました。月に2回のペースで、メンバーが当番制で書評を投稿していきます。

                    

それではさっそく、夏休み第1回目のブログ書評です!第1回目は私村上が担当させていただきます。

今回紹介するのは、苅谷剛彦『大衆教育社会のゆくえ』です。



苅谷さんと言えば、『知的複眼思考法』を書かれた先生です。8月の中央図書館でのバトルで私が紹介した本でもあります。この本のタイトルを聞くと、「ああ、あの人か」と思い当たる人がいるのではないでしょうか。『知的複眼思考法』では常識を疑うことによって考える力をつける方法が紹介されており、『大衆教育社会のゆくえ』は苅谷さんが複眼思考法を実践したものであると紹介されていました。

苅谷さんはこの本で、日本における教育と社会との結びつきを外国のものと比較する「比較社会学」という方法によって明らかにしていきます。常識を疑うことで考える力をつけるのが知的複眼思考法だと紹介しましたが、この本ではどのような常識に着目しているのでしょうか。

良い教育を受け、一流の大学に入ることができる。そうすれば、一流の企業に就職して、幸せな人生を送ることができる。このようなサクセス・ストーリーは、多くの日本人に共有された常識となっています。しかし、この常識を背景にして学歴社会化や受験競争の激化が進行しており、このことが非行やおちこぼれ、不登校といった問題を引き起こしているという批判が聞かれます。そしてこの批判もまた、教育と社会の結びつきについての常識となっています。

私たちにとっては当たり前ともいえる、こうした教育と社会のとらえ方は、実は戦後の日本に特徴的な、ほかの社会においては必ずしも「常識」とはいえないユニークな見方であると苅谷さんは指摘しています。なぜこのような常識が成立したのか、苅谷さんはこの問いを立てて、各国の教育と社会とのつながりの成立過程を分析していきます。

この本を読むと、日本も外国も階層差と戦いながら現在の教育を作り上げていったことがわかります。しかし、階層差をどう取り扱うのか、このアプローチの違いが日本と外国で異なり、その結果、日本独自の教育と社会の結びつきが形成されることになります。この成立過程の細かな分析がとてもおもしろいです。

では、日本における教育と社会の結びつきの成立過程を見ることで、苅谷さんはどのような新しい考えを得ることができたのでしょうか。この点は是非この本を実際に読んで確かめていただければと思います。


新書ですがかなり読み応えのある本です。日本の教育はこれからどこに向かえばよいのか、夏休みの課題図書に是非どうぞ!(村上)

2015年8月13日木曜日

8/9 ビブリオバトルレポート@市立飯山図書館(後半)

ビブリオバトル信州の村上です!
近藤さんのレポートに引き続き、市立飯山図書館で行われたバトルの後半戦の様子をお届けします。

バトルの前半戦はテーマフリー、そして後半戦はテーマ「わ」で本の発表が行われました。
「わ」・・・どんな本を紹介するのか、とても迷うテーマですよね。
発表者の方はどんな「わ」で本を発表してくれたのか、乞うご期待です!

                  

① パトリック・ハーラン 『ツカむ!話術』

第2回目のバトル最初の発表者は、ビブリオバトル信州から参加した近藤さん。
しゃべりがうまくなれるように、という想いから「話(わ)」に関連付けて本を持ってきてくれました。
この本の著者はお笑い芸人のパックンマックンですが、池上彰の推薦を受けて東工大でしゃべりに関する講義をしておられるそうです。
その講義の内容を書籍化したのがこの本です。
理論編と技術編から成るこの本は、まさに会話の心得を教えてくれる本という気がします。
日常会話や、ビブリオバトルのような場面でも応用できそうです。
しゃべりのスキルをアップさせるために是非触れておきたいと思いました!


                    

② 坂木司 『切れない糸』

続いては南澤さんによる、青春ミステリの短編集『切れない糸』の紹介でした。
「糸を使って輪(わ)を作る」という考えから持ってきてくださった本です。
父親が急逝し、家業のクリーニング屋を継ぐことになった新井和也のもとに、お客さんが衣類とともにお悩みを次々と持ち込んできます。
そんなお客さんのお悩みを和也は友人の沢田直之と解決していくことになります。
タイトルの『切れない糸』は、絆や人との関わり合いのことを示しているのとおっしゃっていました。
タイトルも内容も、南澤さんの考える「輪」にピッタリの選書でした。


                    

③ 東野圭吾 『天空の蜂』

3番手は萩原さんによる紹介。持ってきてくださったのは東野圭吾『天空の蜂』でした。
発売されたのは今からちょうど20年前の1995年ですが、2011年に起こった福島第一原子力発電所の事故を予知していたのではないかと考えてしまうほどの内容だそうです。
「天空の蜂」を名乗る犯人による原発停止の要求と、子どもを乗せたまま原発へ出発してしまった自動操縦のヘリコプター「ビッグB」の事件が重なってしまい…。
実はこの本とテーマ「わ」がどうつながるのかお聞きするのを失念してしまいました(汗)。
しかし、この作品は近々映画化されるようですし、8月11日には鹿児島県の川内原発が再稼働するというニュースもありました。
「話(わ)題書」ということで紹介してくださったのかな、と思います。


                    

④ 住野よる 『君の膵臓をたべたい』

4番手の発表者は中学生の水野さん。紹介してくれたのは『君の膵臓をたべたい』、この日のビブリオバトルで紹介された中では一番インパクトがあったタイトルです。
すい臓の病気にかかり、もう長くは生きられないことを知ってしまった女の子の桜良(サクラ)は、そのことをクラスの誰にも話さずにいました。
ところが、一人の男子のクラスメートに病気のことを知られてしまい、そのことがきっかけとなり「2人で、死ぬまでにやりたいことをやろう」と行動を共にすることになります。
ここまで発表を聞くと、これは淡い、切ないような作品なんだろうな…と思いますが、どうしてすい臓を「たべたい」なのでしょうか?
その理由は…読めばわかるということでした。これは気になる!
読めば「わーわー泣ける」本ということで紹介してもらいました。


                    

⑤ 永江朗 『不良のための読書術』

ラストを務めるのはわたくし村上、紹介したのは『不良のための読書術』です。
現代では多くの本が出版されており、その数は年間で万単位になると言われています。
1日に読める本の数は知れており、できるだけ面白い本を読みたいけど、どんな本を選べばいいのか…。
そんな時に登場するのがこの本で紹介されている「ゴダール式読書術」という方法で、本の面白い部分だけ「つまみ食い」してしまえ!というものです。
マジメな良い子はいつも間違える、そうならないためにもゴダール式読書術で本からいろいろな考え方を取り入れ、不良を目指そうというのが永江さんの言い分です。
「不良」と書いて「ワル」と読む、そんな人間になってみようという想いから紹介させてもらいました。
かなりこじつけ感がぬぐえませんが…笑


                    

以上5人による発表でみごとチャンプ本に選ばれたのは…

東野圭吾『天空の蜂』 でした!

原発をテーマにしたこの作品ですが、映画化やニュースの話題があり時流に合う一番ホットな作品だったように思います。
そのことが観戦者の関心をぐっと引きつけたのでしょうね!

テーマ設定があった後半戦ですが、各人いろいろな考えを持って本をもってきてくれました。
今回のようにテーマがひらがな1文字だけだと、発表者がどうしてその本を持ってきたのか、理由を聞くのが一層楽しみになりますよね。
テーマありバトルの良さを実感できる良いバトルになりました。

                    

近藤さんとともに2回に渡る市立飯山図書館で行われたビブリオバトルの様子をお届けしました。
飯山のバトルには昨年も参加させていただきましたが、今回は小中学生の発表者もいて、発表者の年齢層が広がっていました。
普段は大学生が多い環境でバトルをしていたので、新鮮な気持ちでバトルに望むことができましたよー!
来年も是非飯山に行ってバトルがしたいですね(参加してくれたお礼としていただいた飯山名産笹の葉寿司もおいしかったです!)。

以上、近藤・村上によるビブリオバトルレポートでした!

2015年8月11日火曜日

8/9 ビブリオバトルレポート@市立飯山図書館(前半)

こんにちは、ビブリオバトル信州の近藤です!
ここ最近のブログの更新頻度が多くなってきましたが、またも投稿させていただきます。

今回は、8月9日に市立飯山図書館の図書館まつりの一環で行われたビブリオバトルのレポートです!
各5名ずつの2回行われたうち、前半戦について本日は書いていきたいと思います。
後半は僕と村上くんも参加しましたので、そちらのレポートもお楽しみに……


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①阿部謹也『ハーメルンの笛吹き男 伝説とその世界』

今回のバトルのトップバッターを飾る西川さんが紹介してくださったのは、阿部謹也の「ハーメルンの笛吹き男 伝説とその世界」です。
ハーメルンの笛吹き男と言えば、鼠捕りを名乗る笛吹き男に対して報酬を渋ったがために、ハーメルンの130人子供たちが連れ去られてしまうというドイツの童話ですね。
本書は、このおとぎ話が実話だったのでは?というのを現地の伝承や歴史をもとに解説した本です。
20以上の説が記載されているそうで、集団移民説など興味深い話ばかりです。
歴史から童話を紐解くという、とてもワクワクしてくる内容で、僕の気になる1冊でした。



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②イアン・ハッキング『確率の出現』

続く2番手の大村さんが紹介されたのは、イアン・ハッキングの「確立の出現」。
なぜ確率論が17世紀中ごろに登場、発展していったのかというのが書かれているそうです。
本書によるとそれは、パスカルをはじめとする偉人を契機としたものではなく、歴史と共に自然に発生したものである、とのこと。
帰納法的な証拠よりも、実験や占いといった、演繹法的な証拠の方が重視されるようになっていたのだとか。
400ページ近いボリュームがあり、読むのに気合が要りそうですが、実際に確率を計算したりするのとはまた違った見地を広げることのできる本だと思いました。



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③一刀『バカ日本地図-全国のバカが考えた脳内列島MAP』

続いては唯一の小学生発表者、小澤さんの紹介した「バカ日本地図」。
こちらの本は、ネット上のプロジェクトのせいかが書籍化されたものです。
そのプロジェクトとは、「鳥取と島根、どっちがどっちだっけ?」「軽井沢って軽そう」「佐賀ってどこだ?佐渡島?」などといった“バカ”の思い描く日本地図を纏めてみようというものだったそうで、内容はカオスの一言です。
小澤さん曰く、「この本は正しい日本地図が分からないと楽しめません。地理を勉強したらこの本がもっと楽しくなりましたし、勉強も楽しくなりました」とのこと。
小学生ながらもしっかりとした喋りで、とても興味をそそられる発表でした。



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④ティモテ・ド・フォンベル『空に浮かんだ世界(トビー・ロルネス(1))』 

次の紹介者の神田さんはファンタジー小説、「トビー・ロルネス」を紹介してくださいました。
作者はフランスの作家、ティモテ・ド・フォンベルです。
この小説の主人公は大木に住むトビー・ロルネスという1.5mmの小人。
彼はとある理由から、世界を相手に命がけの逃亡劇を繰り広げることになります。
両親は捕まり、友人にも追われる。彼がなぜそんなことになってしまったのでしょうか?
この本の魅力は表現力豊かな人物描写にある、と神田さんはおっしゃっていました。
4巻まで刊行されているようですし、夏休みにピッタリかもしれませんね。
読み聞かせを聞いているかのような神田さんの語りも相まって、とても気になる1冊でした。



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⑤トーマス・トウェイツ『ゼロからトースターを作ってみた』

最後の発表者は学校の先生をされている平田さん。
紹介されたのは「ゼロからトースターを作ってみた」、著者はトーマス・トウェイツです。
イギリスの学生、トーマスがトースターをゼロから作るという、タイトル通りの実録本です。
実はこの本、「ゼロから」の部分が実話とは思えないほどすごい。
電気コードの銅線は銅鉱石から、外部ケースのプラスチックは石油から作ろうというのです。
そして彼は銅山やら石油会社などから様々な原料を調達するため、イギリス全土を駆け巡ることに…
現代技術に囲まれた何気ない生活を新たな視点から見られる、そんな1冊かもしれません。



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以上の5冊の中からチャンプ本に選ばれたのは……
小澤さんの紹介した「バカ日本地図」!!
小学生らしい切り口、言葉選びながらも、聞き手の意識を引きつけるような素晴らしい発表でした。
是非これからもビブリオバトルに参加していってほしいですね。

バカ日本地図に関しては、ネットで検索すればすぐにヒットするプロジェクトですので、それだけでも見てみてはいかがでしょうか?思わず笑ってしまうこと必至ですよ!


さてさて、後半は村上くんにバトンタッチ。
テーマが「わ」という難しい縛りでしたが、僕たち含め参加者たちはどんな本を紹介したのでしょう?
お楽しみに!

2015年8月8日土曜日

8/7 ビブリオバトルレポート@信大工学部図書館

ビブリオバトル信州の村上です。
前回のレポート投稿からあまり日が経っていませんが、今回もレポートを投稿です!
今週はなんと3回もビブリオバトルが企画されているため、うれしい悲鳴を上げております。

今回は8月7日に信大の工学部図書館で行われたつきいちビブリオバトルのレポートです。
前回で開催1周年を迎えたつきいちビブリオバトルですが、今回は初のシバリ導入!
発表する本はマンガオンリーというものでした。

今回の発表者は3人、観戦のみの方が3人で合計6人でのバトルとなりました。

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① 岩原裕二 『ディメンションW』

トップバッターを務めてくれたのは、本の紹介は初めてとなる池田さん。
紹介してくれたマンガは、60年後の未来を描いたSFアクションである『ディメンションW』。
新たに発見された新次元「W」から電気エネルギーのみを取り出し、
それをコイルに貯めて生活に役立てている世界ですが、そのコイルを悪用しようと考える人が現れます。
そんな悪用されたコイルを回収する、1人の人間と1体のアンドロイドのお話です。
紹介によると、作者の頭の中はどうなっているんだと思わせるほどに設定が作り込まれているらしいです。
まつもと一箱古本市のこともあり、SFにはとても興味を引かれます。是非読んでみたい!

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② 朔ユキ蔵 『お慕い申し上げます』

続いては私村上による発表。
紹介したマンガは「お寺系ラブストーリー」がキャッチコピーの『お慕い申し上げます』。
朔ユキ蔵さんの「日本におけるお坊さんとは何だろう」という問いから出来た作品です。
主人公の清玄は立派なお坊さんになることが目標ですが、いつも欲望(主に色欲)に負けてばかり。
はたして彼は立派なお坊さんになるという目標を実現できるのでしょうか!?
お坊さんがテーマなので寺、葬式、墓といったものにも触れることになるのですが、
これらはなかなか自分が考える機会を持たないものです。
お盆も近いので、ちょっとそれらの意味を考えてみませんか?ということで紹介させてもらいました。

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③ ほしよりこ 『逢沢りく』

最後は横川さんによる紹介。
紹介してくれたのは絵のタッチが独特な『逢沢りく』。
中身を見てみると絵と文字が鉛筆で描いたような絵をしていました。
他の作品でもこのタッチは変わらないようで、ほしよりこさんの哲学を感じさせてくれます。
主人公は14歳のクール美女、特技は嘘泣きという「逢沢りく」。
幸せなんだけど、自分の生活がなんだかひんやりしていると感じている彼女。
そんな彼女がある日、関西のお家に預けられることになります。
この環境の変化が彼女にどんな影響をもたらすのか…気になるところです!

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以上3名による発表でみごとチャンプ本に選ばれたのは…


岩原裕二 『ディメンションW』 でした!
発表者としては初参加の池田さん、お見事です!

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初のシバリ導入でしたが、マンガ一色のバトルというのもおもしろかったです。
いつか松本でもシバリを設けてバトルできれば楽しそうですねー。

ところで、各地で全国大学ビブリオバトル2015の予選会が開催されております。
工学部図書館では工学部の文化祭である光芒祭(10月17日)に合わせて開催予定とのことです。
発表者を絶賛受付中とのことだったので、是非申し込んでみてはいかがでしょうか!?

以上、村上によるビブリオバトルレポートでした!



2015年8月5日水曜日

8/4 ビブリオバトルレポート@信州大学中央図書館

ビブリオバトル信州の近藤です。
僕が投稿するのはだいぶ久しぶりになりますねぇ・・・
(村上くんまかせっきりですみませんでした…)


ということで、今回は8月5日に中央図書館で開催させていただいたビブリオバトルのレポートをさせていただきます。
中央図書館での開催は6月に続いて2度目になりましたが、今後もコンスタントにやっていきたいなと思います。

今回の発表者は3人、観戦者も含めて合計10人での開催でした。
途中だけでも観ていって頂いた方も結構いましたし、嬉しい限りですね。

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苅谷剛彦『大衆教育社会のゆくえ 学歴主義と平等神話の戦後史』

今回のトップバッターは村上くん。
彼が紹介してくれたのは、『大衆社会のゆくえ』という本で、著者は教育社会学者の苅谷剛彦さん。
イギリスとアメリカと比較しながら日本の教育と社会の繋がりを紐解いていく本です。
大きなテーマとして”平等”の話が挙げられ、日本の教育は本当に”平等”なものなのかと問われます。
日本では”平等”な教育の機会が与えられ、勉強して、そして社会へと出ていきます。
一方、いい大学に入らないといい会社に入れない、学歴社会と呼ばれる負の社会構造もあります。
ではその格差、不平等を生んでいるのはいったい何なのか?教育の理想の姿ってなんなんだろうか?
それを考えさせてくれる一冊、僕自身読んでみたいと思った本でした。


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森見登美彦『四畳半神話大系』

続いては僕、近藤による発表。
紹介したのは森見登美彦さんによる『四畳半神話大系』。
京都に住む大学生「私」を主人公とした、全4章からなる青春小説です。
晴れて大学に入学し、どんなサークルに入ろうかと考えていた「私」の目に留まったのは4枚のビラ。
もし違うサークルに入っていたらどうなっていたのか?というのが4章のひとつひとつ、パラレルワールドなお話として語られていきます。
それぞれ違う道を進んだ”私”達は、薔薇色のキャンパスライフを掴み取ることができたのでしょうか?
京都の町や、登場人物がとても生き生きと綴られており、どんどん続きが読みたくなる、そんな一冊です。


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桜坂洋『All You Need Is Kill』

最後は小田くんの発表。
トム・クルーズ主演でハリウッド映画化もされた『All You Need Is Kill』です。
舞台は近未来、宇宙から飛来した謎の敵”ギタイ”の襲来に立ち向かう主人公キリヤ・ケイジの物語。
彼はある時に”ギタイ”と戦い、あえなく死亡してしまうのですが、目を覚ますと「出撃前の朝に戻っている」という怪現象に見舞われます。
自分や味方の死を何度も何度も体験し、何をしても自分の死から逃れることができない彼は、絶望感から次第に心を病んでいくことになります。
果たして彼は終わりない自分の死から逃れることができるのか?”ギタイ”とはいったい何なのか?
発表を聞いているだけでとても読みたくなってくるような一冊でしたね。


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以上3名による発表のなか、見事チャンプ本に選ばれたのは…


苅谷剛彦「大衆教育社会のゆくえ 学歴主義と平等神話の戦後史」に決まりました!

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今回は学生以外にも観戦者として参加してくださった方が数名いらっしゃったのが嬉しかったです。
テスト週間の終わりということで疲れている中来てくださった学生さんもありがとうございました。
いつかはぜひ発表者として出ていただけるといいな~なんて思いました。

次回の中央図書館での開催は8月末の予定ですが、日程の確定がまだですので、決まり次第こちらやTwitterで報告させていただきます。

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さてさて、最後にいくつかお知らせをば…

まずは信大工学部図書館で行われている、「つきいちビブリオバトル」が8月7日(金)午後4時半から開催されます!
どうやらテーマをマンガ限定にしているようですので、この夏なにか読みたいけど、気になるものが無い!というかたは、顔を出してみてはいかがですか?

信大工学部図書館
http://www.shinshu-u.ac.jp/institution/library/engineering/


お次に、8月9日(日)に飯山市の市立飯山図書館でおこなわれる「図書館まつり」の一環として開催されるビブリオバトルに、我々ビブリオ信州のメンバーも参加させていただくことになっております。
「本のリサイクル市」なども行われていますので、是非いらしてくださいね!

市立飯山図書館「図書館まつり」
http://www.city.iiyama.nagano.jp/soshiki/shimingakusyuusien/toshokan/news/tosyokanmaturi


最後に、松本市内で行われる「まつもと一箱古本市」に、ビブリオバトル信州として出店させていただくことになりました。
場所は四柱神社や縄手通りのすぐ横、松本城大手門枡形跡広場です。
日時は9月21日(月・祝)の10時から16時までです。
さらに、そこでビブリオバトルを開催させていただくことになりました。
もちろん一般参加OKですので、奮ってご参加ください!
イベントの内容やビブリオバトル参加方法など、詳しくは「まつもと一箱古本市」さんの公式ブログでご確認ください。

まつもと一箱古本市
http://mhitohakob.hatenablog.com/entry/2015/08/03/213008



以上、近藤によるビブリオバトルレポートでした!