2013年11月22日金曜日

ブログ書評第21回『クララは歩かなくてはいけないの?』

前回からかなり間が開いてしまいましたが、書評は続きます!


今日紹介する本は、ロイス・キース『クララは歩かなくてはいけないの?』です。


既にお気づきの方も多いと思いますが、タイトルの「クララ」は、『アルプスの少女ハイジ』に登場する、車いすに乗る少女です。『ハイジ』では、ハイジが住むアルプスにクララも住むことになり、そこでクララが自立する意思を持ち始め、ついに車いすから立ち上がり歩き出すシーンが感動的に描かれています。私も、そのシーンはアニメで見て、今でもよく覚えています。

本書では、この感動的なシーンについて全く新しい見方を提示してくれます。なぜ私たちは「障害」からの「回復」に感動するのでしょうか。著者は、その裏には私たちが無意識に持っている「障害」に対するイメージが、特に子供向けの文学において比喩として用いられていると書いています。
その「イメージ」とは一体どういうものであるのか。それは是非読んで確かめていただければと思います。

私たちは普段「障害」や「病気」というものを「克服されるべきもの」と捉えがちです。そのような観点がどのくらい普遍的なものなのか、また、そのような考え方が障害を持つ人の幸せにつながるのか、非常に考えさせられる本です。

本書はロンドンに住む著者によって書かれていて、著者自身も事故で車椅子を使用しているそうです。私は日本に住んでいて車いすも使用していないので、本書に書かれている著者の考え方に戸惑うこともありました。国や時代、もちろん個人の間でも障害に対する考え方も異なるのかもしれませんし、宗教観なども関わっているのだろうとも感じられ、それについても新しい見方を教えてもらった気がします。障害と宗教観については、巻末の解説にも注目して下さい。

障害を「障害」と呼ばせるものは何なのか、「回復」とは何なのか、障害は「回復」しなければいけないのか、難しい問いですが、とても大事な問いであると思います。(あらと)

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